ミステリー?コメディ?最新映画『ナイブズアウト』が超面白い!

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今年も始まって一ヶ月少しですが、もう2020年度暫定ベスト級の傑作に出会ってしまいました!ライアンジョンソン監督『ナイブズ・アウト』!今回はこの映画のレビューを書きたいと思います。

(※少しネタバレしてます)

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・あらすじ

世界的ミステリー作家ハーラン・スロンビーの85歳の誕生日パーティーが彼の豪邸で開かれた。その翌朝、ハーランが遺体となって発見される。依頼を受けた名探偵ブノワ・ブランは、事件の調査を進めていく。莫大な資産を抱えるハーランの子どもたちとその家族、家政婦、専属看護師と、屋敷にいた全員が事件の第一容疑者となったことから、裕福な家族の裏側に隠れたさまざまな人間関係があぶりだされていく。

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 : 作品情報 - 映画.com

・感想 

この作品が面白いのは人を騙すことで優位に立つ通常のミステリーを脱構築し、嘘をつけない人が最終的に優位に立つという構造になっている点です。

開始数分は通常のミステリーのように、犯人に疑われる登場人物たちがそれぞれアリバイについて話す。しかし開幕早々、事件の真相が発覚します。そしてこの事件が故意のものではないことから、いかにして犯行を隠すのかというサスペンスコメディへと変貌します。さらにそこで終わりにせず、推理劇としての面白さも保ちながら爆笑のクライマックスへ突き進みます

劇場は『カメラを止めるな』の時を思い出すほど、笑いに溢れていました。カメ止め繋がりで言うと、上田慎一郎最新作『スペシャルアクターズ』の主人公は緊張すると気絶してしまうという特殊な設定があったが、それは結局ギャグとしてしか機能していませんでした。本作のキーパーソン・マルタも同様に、嘘をつくと吐いてしまうという特殊な設定が与えられています。しかし、その設定がただのギャグではなく、ミステリーの脱構築という物語上重要な役割を担うことになっています

嘘をつけないという性格が事件の解決に導くという逆転劇は、登場人物の出自から産まれる社会的地位の逆転劇にも繋がります。マルタは移民の娘であり、彼女に立ちはだかるのは天才作家ハーラン・スロンビーのすねをかじって生きる白人たちです。他者を欺き、暴言を吐くようなスロンビー家の人間と異なり、いかなる時でも他者を助けるという自分のルールを守り続けたマルタが最後に辿り着く場所に注目してください。本作の優劣を視覚的に表現するラストショットは爽快でした!

 

登場人物が複数人いるのにその全てちゃんとキャラ立ちしているということも単純に凄いです。

ミステリー、コメディ、キャラ映画あらゆる角度から楽しめる傑作です!