明るいのに怖い?日本映画からの影響?『ミッドサマー』が超絶面白い!

昨日2月11日、TOHOシネマズ日比谷にてアリ・アスター監督最新作『ミッドサマー』を一足早く鑑賞してきました!公開後には映画評論家の町山智浩さんによるトークショー付きで、なんとも贅沢な時間を過ごすことができました。

 

・『ミッドサマー』とは 

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長編デビュー作「ヘレディタリー 継承」が高い評価を集めたアリ・アスター監督の第2作。不慮の事故により家族を失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れた。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、やさしい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園としか形容できない幸福な場のように思えた。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていく。ダニー役を「ファイティング・ファミリー」のフローレンス・ピューが演じるほか、「トランスフォーマー ロストエイジ」のジャック・レイナー、「パターソン」のウィリアム・ジャクソン・ハーパー、「レヴェナント 蘇えりし者」のウィル・ポールターらが顔をそろえる。

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・監督アリ・アスターとは?

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アリ・アスター監督

アメリカン・フィルム・インスティテュートで美術修士号を取得。「The Strange Thing About the Johnsons(原題)」(11)、「Munchausen(原題)」(13)、「Basically(原題)」(14)などいくつかの短編映画を脚本・監督して発表する。長編監督デビュー作「へレディタリー 継承」(18)では、祖母の死をきっかけにさまざまな恐怖に見舞われる一家を描き、サンダンス映画祭やサウス・バイ・サウスウェスト映画祭で注目を浴びるとともに、「エクソシスト」に並ぶホラーの誕生と米国内の批評家から絶賛された

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・前作『ヘレディタリー継承』とは?

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家長である祖母の死をきっかけに、さまざまな恐怖に見舞われる一家を描いたホラー。祖母エレンが亡くなったグラハム家。過去のある出来事により、母に対して愛憎交じりの感情を持ってた娘のアニーも、夫、2人の子どもたちとともに淡々と葬儀を執り行った。祖母が亡くなった喪失感を乗り越えようとするグラハム家に奇妙な出来事が頻発。最悪な事態に陥った一家は修復不能なまでに崩壊してしまうが、亡くなったエレンの遺品が収められた箱に「私を憎まないで」と書かれたメモが挟まれていた。「シックス・センス」「リトル・ミス・サンシャイン」のトニ・コレットがアニー役を演じるほか、夫役をガブリエル・バーン、息子役をアレックス・ウルフ、娘役をミリー・シャピロが演じる。監督、脚本は本作で長編監督デビューを果たしたアリ・アスター

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祖母の死をきっかけにとある家族が恐怖に陥るという話の前作『ヘレディタリー継承』は海外ホラー作品の中では屈指の怖さのある作品でした!

暗いところに何かがうっすら写っているのが怖い。。。作品内でその正体や全貌を明らかにしないからこそ、それに対する恐怖が観客の脳裏に蓄積されていきます。しかし、後半にはもうテンションがとんでもないことになり、その中にはなぜか笑ってしまう滑稽さもありました。母親の顔芸や息子を全力で追いかけるシーンには笑ってしまいました。そしてどこか祝祭感と同時に救いを感じる幕引きを迎え、どういう感情で見ればいいんだ??と観客を混乱させます。

 

・『ミッドサマー』感想

 それでは最新作『ミッドサマー』について述べたいと思います。

『ミッドサマー』は『ヘレディタリー継承』同様、言及されない細部の蓄積で恐怖を煽りつつも、笑っていいのか怖がった方がいいのか複雑な感情にさせられます。特に村の祭りでのダンス大会シーンは爆笑してしまいました。そして詳細は伏せますが、ラストに救いを感じさせるのも同じだと言えます。

前作と大きく違うのは劇中ほとんどのシーンが明るいということ。本作は白夜のスウェーデンが舞台であり、夜の数時間を除いてほとんどのシーンがデイシーンで撮影されています。逃げ場であるはずの太陽の下でも常に恐怖を感じさせ、観客に逃げ場を与えさせません。これは結構画期的なことなのだと思いました。

 

町山智浩さんの解説

町山智浩さんの解説について言及したいです。

・本作に影響を与えた作品

アリ・アスター監督は今村昌平監督の影響を強く受けており、本作では特に『神々の深き欲望』の強い影響下にあるそうです。

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神々の深き欲望

東シナ海」の今村昌平長谷部慶治が共同でシナリオを執筆し、「人間蒸発」の今村昌平が、神話的伝統を受けついで生活する沖縄の一孤島を舞台に、因襲や近代化と闘う島民の生活を描いた。撮影は、栃沢正夫

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沖縄の孤島独特の風習に巻き込まれるという展開は本作とほとんど同じです。

 

また作中イングマルというキャラクターが登場するように、スウェーデンの映画監督イングマールベルイマンの作品、特に「ある結婚の風景」から影響を受けているそうです。

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夫婦のディスカッション・ドラマともとれる本作は、初め、5時間にも及ぶTVシリーズであったが、評判を呼び、再編集され劇場公開された。幸福な結婚生活を続けていたヨハンとマリアンヌは、地元新聞社からの取材に応え、模範的夫婦について語る。しかし、それが活字になってみると、まるで空虚でつまらぬモノに感じられ、それ以来、二人の間にはすきま風が吹き、論争の嵐が起こるのだが……。ベルイマンによる“夫婦げんかの形而上学

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・監督の個人的な癒しの物語

本作は監督が彼女と別れた体験をベースに物語を考えたそうです。両親に不幸があったにもかかわらず、その彼女は彼にあまり寄り添ってあげなかった。にもかかわらず、彼はその縁を切れずにいた。本作はそのような体験を実際にしたアリ・アスター監督の投影として主人公ダニーを見ることができます。

監督は「自分の自身の癒しが世界に対して意味を持つ」という信念を持っており、それは前作『ヘレディタリー継承』は両親の不幸に対する癒しとして描いたそうです。

 

以上、読んでいただきありがとうございました!